こんにちは、でんゆうです!
今回は市販のブックライトのLEDを交換しましたので記事にします。LED回路の設計方法や注意点など記載しますので、LEDを光らせたいときや光量を変えたいときに参考になると思います。
ブックライトのLEDをより明るくする
先日、久しぶりに会った母から依頼されました。
ブックライトのLEDをより「明るく」、「広範囲」に光らせてほしいとのこと。
ブックライトとは周りが暗いときに手元を照らし、本が読めるようにするライトのことです。寝室で使用する際、他の人に迷惑にならないように光角度が狭いようです。
依頼のブックライトはこれ。
中身の回路構成は単純だと思ったので快諾しました。中身の基板はこれ。
部品さえ取り外すことができれば大丈夫そうです。
LEDの光をより「明るく」、「広範囲」、やっていきます!
基板調査
手を加える前に現状の確認を行います。
回路起こし
まずは基板を見て回路図を起こします。
とても単純なLED駆動回路が2並列で構成されています。
電源はコイン電池のCR1620を直列に2個搭載しており、6V電源となります。
ただし負荷がかかると電圧降下するので6Vちょうどが印加されることはありません。
CR1620-DATASHEET|村田製作所
電流値の調査
回路構成がわかったところで、安定化電源を使って実際の電流値測定します。現時点での電流値を把握することで、LED交換後の電流値設定の目安になります。
電流値測定の接続はこんな感じ。安定化電源に表示される電流値を測定値とします。
安定化電源は測定器ではないのであまり信用できませんが、それほど精度は求めないので今回はこの方法でいきます。
※表示が見えづらかったので加工しています。
6V印加時は基板全体でおおよそ48mAということがわかりました。LED駆動回路は2並列構成なので半分の24mAとなります。
実際はLEDや抵抗器の特性ばらつきによりちょうど半分ではありませんが、今回は均等に電流が流れると仮定します。
LEDの置き替え設計
LED選定は半減角を重視
次にLEDを選定します。今回はでんゆう御用達の秋月電子通商さんから選定し、購入したいと思います。
LED交換の目的として「明るく」と「広範囲」の2つの要素があります。「明るく」するのは後ほどの抵抗値設定でなんとかなりますが、「広範囲」に光らせるにはLEDの特性が重要になります。従ってLED選定では光の角度を重視していきます。
今回重要になる特性は「半減角」と呼ばれる指向性を表す特性パラメータです。他にも「半値角」と呼ばれたりするようですが、意味は同じようです。
「OSW4XA5141R-150MA」を例として説明します。(以下、データシートより抜粋)
特性図の見方としては、LED正面の最も明るい地点を”1”とし、正面からズレた“1”の半分の明るさの地点を”0.5”とします。この”0.5″の地点は左右にありますので左右合計の角度が「半減角」となります。
パラメータシンボルとして「2θ1/2」と記載されています。これは半分の明るさ(1/2)を左右分2倍する(2θ)という意味です。
今回「半減角」を重視して選定したLEDがこちら。
型格:OSW54K5B61A
メーカー:OptoSupply
問題の「半減角」は特性図で確認すると左右30°ずつで60°となっています。(以下、データシートより抜粋)
他のLEDの多くは30°程度だったのに対し、広角照射という名目で売られていたこちらのLEDを選定しました。
手元にあった半減角30°のLEDと比較してみました。
確かに照射範囲は倍程度ありそうです。しかし範囲が広い分、光量が低い気がします。
抵抗値設定
LEDが決まったところで次は抵抗器を設定していきます。
ポイントは
- ①LED特性より抵抗値目安を決定
- ②抵抗値はE系列を確認
- ③抵抗器は定格電力を確認
です。①から順に見ていきましょう。
①LED特性より抵抗値目安を決定
LEDと直列に接続する抵抗器を「電流制限抵抗」と呼びます。この抵抗器はLEDに流れる電流を制限することで、LEDの破壊を防止するとともに明るさを制御することができます。
電流制限抵抗値を決める際はあらかじめ
- LEDの順方向電圧”VF”を確認・・・LEDのデータシートを確認します。
- 駆動回路全体にかかる電圧”V”を確認・・・直流電源が何Vかを確認しておきます。
- 流したい電流値”IF”(※)を決める・・・流したい電流値を設計者が決めます。
の3点が必要です。この3点が揃えば以下の計算をするだけで抵抗値を求められます。
(※)流したい電流値はデータシートに記載のIFの定格電流以下で決めます。定格電流以上の電流を流してしまうとLEDの破損につながります。
① 駆動回路全体にかかる電圧”V”からLEDの”VF”を引き、抵抗器に掛かる電圧を求めます。
② 抵抗器に掛かる電圧が分かれば、流したい電流値”IF”から目安の抵抗値を求めます。こちらはオームの法則で求められます。
今回選定したLEDのVFを確認していきます。Vf特性図がこちら。(以下、データシートより抜粋)
LEDに流す電流によってVFが変化します。目安としてLEDの交換前に測定した6V/24mAの条件で確認します。24mA流した際のVFは約3.2Vと確認できましたので、先程の抵抗値を求める方法で計算していきます。今回は
・ LEDのVF = 3.2[V]
・ 直流電源V = 6[V]
・ 流したい電流IF = 0.024[A]
となります。
計算結果より117Ωの抵抗器を実装すると24mA流せる計算になります。この値を一旦の目安とします。
②抵抗値はE系列を確認
抵抗値が117Ωと算出できたので、この抵抗器を購入して実装しよう!とはなりません。。なぜなら世の中にある抵抗器は1Ω毎に製造されておらず、あるリストを元に製造されています。
そのリストというのがE系列です。E系列についての詳細はここでは割愛しますが、JIS規格で定められている等比数列による数列表です。私はいつもこちらのサイトを参考にさせていただいています。
あまり難しくは考えず、リストの数値×10^nと覚えればOKです。例えば一番上のE3系列の”47″を例とすると、4.7Ω、47Ω、470Ω、4.7kΩ・・・などが手に入り易いです。10や22も同様です。
E3系列に近いほど入手性が良く価格も安いので、できるだけ上のリストから選択すると良いでしょう。
今回の抵抗値の目安は117Ωなので100Ωや110Ω程度が良いですね。
ここで117Ωより低い定数を選択している理由は、元々の目的である「明るく」を意識しているためです。オームの法則より抵抗値を低くすると電流が流れやすくなり、結果「明るく」なります。既存の光量より明るくしたいため、既存回路と同じの24mAが流れる117Ωより低く設定します。
手元に100Ωがあったのでこちらを使用したいと思います。
これで抵抗値の設定が終わりました。念のため実際に流れる電流を計算しておきます。
計算方法はこちらです。
抵抗値を求めた際の計算式と似ていますね。最後のオームの法則部分の“R”と”IF”が入れ替わっただけです。計算結果より28mA流れることがわかりました。若干ですが流れる電流が増えたため、明るくなることを期待します。
③抵抗器は定格電力を確認
次に実際の抵抗器の選定です。
100Ωの抵抗器であればどれでも良いということではありません。抵抗器の定格電力を確認する必要があります。素材にもよりますが、抵抗器の定格電力は物理サイズに比例します。
電子回路に使用する抵抗全てに言えますが、抵抗には電圧を印加し電流を流して使用するため、電力がかかります。特に今回のような電流を流すことを目的とする抵抗器は定格電力の確認が必須です。
実際の電力に対して抵抗器の定格電力が下回るっていると、事故に繋がりますので注意しましょう。
今回の抵抗器にかかる電力を確認しておきます。
求め方はこちら。
抵抗値に掛かる電力は約80mWとわかりました。選定する抵抗器は80mW以上の物を選びます。
ただし抵抗値の誤差やLEDの特性ばらつきにより抵抗器に掛かる電力はばらつきます。また、抵抗器の温度特性により定格電力がばらつきますので、十分余裕をみて1.5倍の120mW以上の抵抗器を選定するのが安全でしょう。
手元にあった抵抗器は3216サイズの定格500[mW]です。
物理サイズが大きいので実装が心配ですが、定格電力が大きい分には問題ありません。今回はこちらの抵抗器を使用します。
改造後の確認
部品の交換が終わり点灯したところ、以前より若干「明るく」、「広範囲」になりました。
(母より「早く返して」と言われたので比較写真を撮影する間もなく返却してしまいました。いずれ比較写真を載せたいと思います。)
何はともあれ目的である「明るく」と「広範囲」にできました!
ただし、今回の改造で消費電流が大きくなりましたので、電池の持ち時間が少なくなってしまいます。電池を交換頻度が多くなりますので、電流の流しすぎには注意しましょう。
まとめ
今回は市販ブックライトのLEDを「明るく」、「広範囲」に照射するように改造しました。LEDの選定方法は目的によって異なりますが、電流制限抵抗の計算方法や選定方法については参考にしていただけると思います。くれぐれも怪我、事故の無いように注意して設計・ハンダ付けをしてください。