前回記事の最後でシステム全体構成を記載しました。本記事では各ユニットの詳細を説明します。
メインユニット
本システムのメインとなるユニットが「メインユニット」です。
「メインユニット」には
・チャージコントローラー
・制御基板
を搭載しています。
チャージコントローラー
チャージコントローラーは「SA-BC10(電菱)」を採用しました。
採用理由は
- 日本メーカーであること
- サイズがコンパクトであること
- 自己消費電力が少ないこと
です。私自身、カーポート計画で初めて太陽光システムを導入するので、事故や火事を避けたかったのもあり取扱説明書やサポートがしっかりしていそうな国産メーカーを選択しました。
また、元々「メインユニット」にバッテリーも搭載しようとしていたのでコンパクトサイズを重視していました。(バッテリーは重すぎたのでメインユニットへの搭載は諦めました)
バッテリーも小さく(低容量)安いものを採用していたのでコントローラーの自己消費電力が少ないものを探していました。
これらの理由から「SA-BC10(電菱)」を採用することになりました。表示ディスプレイやUSBポートは搭載されていませんが、コントローラーとして必要な機能はありますので全く問題ありません。今回は夜間のみLEDを点灯したいため、「終夜点灯タイプ」を採用しています。
チャージコントローラーの主な機能としては
- バッテリー過電圧保護
- 低電圧保護
- 過負荷保護
- 過温度保護
- 逆接続保護
- 負荷短絡保護
- サージ保護
などバッテリーや制御基板を保護する機能が多く搭載されています。
ただしバッテリーの定格充電電流以下になるように調整する機能はないようなので、バッテリーと太陽パネルの選定の際は定格充電電流と出力電流を確認するようにします。念のためコントローラーとバッテリーの間にヒューズなどを入れておくと安全ですね。
制御基板
本システムのメインとなるのが「制御基板」です。「制御基板」はフルカスタムで製作しました。製作工程は
- 回路設計
- 基板レイアウト設計
- 基板製造
- 部品実装
です。私の設計ツールや製造委託先については別で紹介したいと思います。
「制御基板」は赤外線コードを解析し、内容に応じてLEDをON OFF制御します。
LED駆動回路は4チャンネル有しており、制御するMCU(マイコン)はPICマイコンです。
MCU動作は以下のような感じ。(ざっくりです)
赤外線を受信するとメインルーチンから割り込みルーチンに入り、解析したコードに応じてLEDをON OFF制御します。その後5分後には全LEDを消灯させるといった動作です。他にもエラー処理やハング対策など組み込んでいます。(これが一番大変でした。。)
システムのメインとなる「メインユニット」の説明は以上です。あとは太陽光パネルやバッテリー、LEDを接続するだけでOKです。
バッテリーボックス
続いて、「バッテリーボックス」について説明します。
「バッテリーボックス」はバッテリーがひとつ入っているだけの箱です。
上述した通り、元々は「メインボックス」に入れたかったのですが、バッテリーが予想以上に重すぎたため断念し、独立のボックスを用意しました。
使用した部材はこちら
名称 | 型格 | メーカー | 品名 |
バッテリーボックス本体 | BCPC162110S | タカチ | 筐体 |
バッテリー | WP7.2-12 | Kung Long | 鉛蓄電池 |
接続端子 | STO-41T-187N-8 | JST | ファストン端子 |
ケーブルグランド | RM20L-12S | タカチ | ケーブルグランド |
メインボックスとの接続ケーブル | 2PNCT(0.75mm 2C) | 富士電線 | ケーブル |
配線を引き出すためにボックスに穴を開けて防水のためケーブルグランドを使用しています。もちろんボックスは防水仕様です。
屋外で使用するため配線ケーブルは擦れや熱に強く耐候性が優れているゴムキャブタイヤケーブルを使用しています。特に2PNCTシリーズは耐熱耐候性に優れているためオススメです。
バッテリーは12V仕様の容量7.2Ahの「WP7.2-12(Kung Long)」を選定しました。LEDフル点灯でも1A未満なので7時間程度持ちます。一回の操作で5分間点灯なので充分かと思います。
次項の「太陽光パネル」の選定で重要になるバッテリーの定格充電電流は2.16Aとなっています。
太陽光パネル
続いて、システムの電力元となる「太陽光パネル」について説明します。
使用している部材はこちら。
名称 | 型格 | メーカー | 品名 |
太陽光パネル | RNG-30D-SS | RENOGY | 太陽光パネル |
防水コネクタ | M150 | CTRICALVER | 防水コネクタ |
メインボックスとの接続ケーブル | 2PNCT(0.75mm 2C) | 富士電線 | ケーブル |
太陽光パネルは30W単結晶のものを選定しています。
また最大出力電流はバッテリーの充電電流以下であることを確認しています。
単結晶は高効率
太陽光パネルのセルの材料でもあるウェーハの作り方の違いにより「単結晶」と「多結晶」の2種類に別れます。「単結晶」はコストは掛かりますが発電効率が優れています。
理由は製造方法の違いにあり、「単結晶」の製造工程で出た原料クズを再成形し製造しているのが「多結晶」セルです。そのため「多結晶」は安価に製造できる分お安いですが、結晶密度が低いことなどから発電効率が悪くなっています。
つまり良いものは高価ということですね。発電効率は太陽光システムを運用する上で非常に重要な特性なので、太陽光パネルを購入する際は予算を考慮した上で結晶の違いについてもチェックしましょう。
充電電流以下での充電が安心
「バッテリーボックス」の項目でも触れましたが今回使用するバッテリーの定格充電電流は2.16Aまでと記載されています。定格電流以上を流すとバッテリーの劣化が進んだり事故につながる可能性があります。安全のために定格電流以下で使用することにします。
選定した太陽光パネル(RNG-30D-SS)の「公称最大出力動作電流」は1.60Aと記載されています。バッテリーの充電電流を上回っていないため問題ないと判断します。
分岐ボックス
次に「分岐ボックス」についてです。
分岐ボックスはその名の通り、伝送路を分岐させるためのボックスです。
名称 | 型格 | メーカー | 品名 |
分岐ボックス本体 | BCPC162110S | タカチ | 筐体 |
分岐コネクタ | SPL-42 | Aliexpress | ミニクイックワイヤーコネクタ |
端子台 | TB1506 | Aliexpress | ターミナル端子台 |
ケーブルグランド | RM20L-12S | タカチ | ケーブルグランド |
小形防雨入線カバー | WP9171 | パナソニック | 小形防雨入線カバー |
メインボックスとの接続ケーブル | 2PNCT(0.75mm 3C) | 富士電線 | ケーブル |
メインボックスで説明した通り、制御基板での制御チャンネル数は4チャンネルですが、カーポートには6個のLEDを搭載したいと考えています。チャンネル数に対してLEDの数が2個多いため、2チャンネルを各2分岐する必要があります。
そこで必要になるのが「分岐ボックス」です。伝送路の分岐方法はAliExpressで購入した分岐コネクタです。
1個数百円で購入できました。
接続はこのようになります。
チャンネル0とチャンネル3はストレートでLEDと繋がっています。そのため独立した制御が可能です。
チャンネル1とチャンネル2は分岐して2つのLEDと繋がっており、それぞれ同時点灯となります。こうすることで4チャンネルで6個のLEDを接続することができます。
また「メインボックス」と「分岐ボックス」を接続するケーブルは、4チャンネル分接続するために4本(マイナス側を含めると8本)のケーブルで配線すると見栄えが悪いため、3芯ケーブルを2本使用して接続しています。
実際の分岐ボックスの写真はこちらです。
LEDユニット
「LEDユニット」はLEDを組み込んだ発光ユニットです。制御基板同様に基板設計から製作しています。
名称 | 型格 | メーカー | 品名 |
チップLED | Natural White 3000K | Aliexpress | チップLED (5730サイズ/ナチュラルホワイト) |
LED基板 | ― | FusionPCB | カスタム基板 |
LEDケース | U Style 300mm | Aliexpress | LEDバーライトホルダー |
分岐ボックスとの接続ケーブル | 20AWGシリコンワイヤー | ZHONGWANG | シリコンワイヤー |
「LEDユニット」にはLED基板が3枚並列接続されており、LED基板には3つのチップLEDが直列に配置しています。つまり、ひとつのLEDユニットにチップLEDが9個搭載されます。
使用するチップLEDはAliexpressで購入しました。(写真はAliexpressより参照)
LED基板は自分で設計し、製造は中国の基板製造会社に委託しました。ケースが乳白色透明なので白色にしています。
LEDケースについてもAliexpressで購入しました。ちなみに製作したLED基板はこのケースに合わせて設計しています。(写真はAliexpressより参照)
LEDや抵抗器をはんだ付けし、光らせたらこんな感じ。
乳白色のカバーを付けるとこんな感じ。いい感じに光が分散しています。
LEDケースの横蓋は配線を引き出せるように丸い穴が空いています。穴から虫が入らないようにコーキング材で穴を塞いでおきます。
部品を実装し、組み立てればLEDユニットの完成です。これを6個製作しました。
リモコン
最後に「リモコン」について説明します。
リモコンはLEDを操作するために必要な赤外線式のリモコンです。
いずれは小型化を検討していますが、現時点ではプロトタイプということで大きめのケースに入れています。中に入っている電子基板は「制御基板」、「LED基板」同様カスタム品で自ら設計しています。
名称 | 型格 | メーカー | 品名 |
リモコン本体 | WH145-25-M3-BR | タカチ | 防水ハンドヘルドケース |
リモコン基板 | ― | FusionPCB | カスタム基板 |
スイッチ | PBS-33B 2PIN | Aliexpress | プッシュスイッチ |
スイッチを3つ備えており、押されたスイッチに応じた信号を赤外線(IR)LEDから出力します。ONスイッチが2つあり、2つのスイッチを押下することでカーポートの右側・左側を点灯させます。
両方同時に押下することでカーポート全体を点灯させることもできます。
OFFスイッチを押下すると5分後の自動消灯を待たずに消灯させます。
リモコンの機能は多くないですが、本システムとして充分な役目を果たしています。
プロトタイプ版では単3電池を3個使用していますが、リモコン基板自体がハードウェア・ソフトウェアともに低消費電力設計にしていますので、電池を取り替える機会は少ないでしょう。また今後は2種類のリモコンを開発する予定です。
- 小型化ポータブルリモコン
- 車載リモコン
小型化ポータブルリモコンについて
現在のプロトタイプ版でも動作可能ですが、非常に大きいため持ち運ぶのは難しいです。(スマホよりふたまわり大きい)そのため小型化を検討しています。すでにリモコンケースは入手しており、クルマのスマートキーのような大きさ・デザインです。これならば非常にコンパクトになり持ち歩きも可能となります。
車載リモコンについて
カーポート計画の最初の目的でもある「車が近づくだけで点灯してほしい」を達成するために、車載リモコンは必須です。クルマに搭載したリモコンから常に赤外線信号を出力し、カーポートに近づいた際に信号が受信されLEDが点灯するようにします。こちらも小型ケースは入手していますが、基板設計などが途中なので完成次第ブログに掲載したいと思います。
まとめ
今回は以下の各ユニットについて記載しました。
- メインユニット
- バッテリーボックス
- 太陽光パネル
- 分岐ボックス
- LEDユニット
- リモコン
中でも制御基板やLED基板、リモコン基板については基板を設計し、組み込みソフトウェアの設計まで実施しました。太陽光システムを取り入れることで規模が大きく見えますが、基本的にやっていることは電子工作です。
また今回初めて太陽光システムを使用したので安全面を重視しました。最も避けたいのはバッテリー要因の火災です。保護機能が豊富なチャージコントローラーを使用することはもちろん、バッテリーと太陽光パネルのバランスも重要かと思います。
電子工作は誰でも気軽に始められますが、一歩間違えると大事故につながる可能性があります。安全に・慎重に電子工作を楽しんでいきましょう!
次回は最後の取り付け編です。カーポートに穴やキズをつけずに各ユニットを設置していきます。設置のための部材もご紹介しますのでお読みいただければと思います。
お読みいただきありがとうございました!
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